関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-180 歩行時痛の治療に難渋した右脛骨腓骨遠位端開放骨折・脛骨天蓋骨折・踵骨骨折を呈した一 症例
井波博
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p. 180-

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抄録

【はじめに】踵骨骨折は踵骨が複雑な関節面を有するという解剖学的特徴により治療の難しい骨折の一つとして認識されている.今回,交通事故により踵骨骨折の他に脛骨腓骨遠位端開放骨折と脛骨天蓋骨折を合併した症例の理学療法を実施する機会を得た.歩行時痛の治療に難渋したがテーピングと足底挿板を使用し即時的に歩行時痛が減弱した.ここに若干の考察を加えて報告する.尚,症例には本発表の意義と目的を書面にて説明し同意を得た. 【症例紹介】年齢:30 歳代.性別:男性.診断名:右脛骨腓骨遠位端開放骨折,脛骨天蓋骨折,踵骨骨折,左母指伸筋腱断裂.現病歴:2014 年3 月交通事故にて受傷.緊急手術施行.Debridement 実施.Gustilo の分類typeII.受傷後11 日目観血的整復内固定術施行.

【初期理学療法評価】外側創部皮膚滑走性低下.ROM-t (右):背屈-20° 底屈45°MMT (右):GC2EHL2EDL2TP3 踵骨・足部回外位【最終理学療法評価】ROM‐t(右):背屈15°底屈40°MMT(右):GC2EHL4EDL4TP3 踵骨軽度回外位.背屈強制にて疼痛再現.歩行時痛:立脚中期に距腿関節前外側部から前方に発生NRS:足底挿板未使用8/10 使用3/10【考察】本症例は骨癒合完成後も疼痛があり歩行時痛の治療に難渋した.他動背屈で距腿関節前外側に疼痛が発生し,距骨後方誘導下での背屈時痛が減弱した.加えて踵骨は固定術施行後軽度回外位であり,立脚中期中も同様であることが観察された.疼痛再現評価より距腿関節前外側の疼痛の原因は距骨と脛骨との衝突と考えた.また足部前外側に発生する疼痛の原因は立脚中期に踵骨回外方向に皮切部が牽引され皮切下の腓腹神経が刺激を受け,疼痛を惹起させていたと考えた.距骨後方誘導目的のテーピングにて距骨が円滑に後方移動し距腿関節前外側の疼痛は減弱したと考える.また足底挿板装着により踵骨回外位が是正され円滑に足圧中心が移動可能となったため歩行時痛が即時的に減弱したと考える.

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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