関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-181 踵骨骨折術後のリハビリテーション~荷重開始に伴う変形性足関節症の発症防止を目指した治 療アプローチ~
加藤悟
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p. 181-

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抄録

【はじめに】 踵骨骨折術後において,その患者の約60%が荷重開始に伴い二次的な変形性足関節症(以下OA)を発症すると言われている.今回は,踵骨骨折術後の二次的な足関節OA 防止を目的に,免荷期間に実施した治療アプローチについて以下に報告する.尚,ヘルシンキ宣言に則り,説明を行い同意を得た.

【症例紹介】 76 歳,女性.自宅内で転倒し右踵骨骨折を受傷.他院にてスタイマンピン固定施行.術後4W で抜釘し,当院に転入院.術後5W まで免荷,6W で1/3,7W で1/2,8W で2/3,9W で全荷重に移行.術後10W で自宅退院. 【評価】 右踵骨部,足関節の疼痛(NRS)は,安静時,関節運動時,荷重時ともに「0」.MMT は後脛骨筋,長腓骨筋,長母趾屈筋が「3」.ROM は背屈10°,内外反10°.アライメントでは,足関節底屈時の腓骨可動不良,背屈時の距骨の入り込み不良,歩行時の右膝関節外側スラストが見られた.

【治療・結果】 二次的OA 防止を目的に,後脛骨筋,長腓骨筋,長母指屈筋の滑走,収縮運動,内外反ROMex を集中的に実施した.その結果,最終評価時(全荷重移行後)には,ROM は背屈15°,内反30°,外反20°に改善.腓骨の可動性,距骨入り込み機構にも改善が見られ,NRS は初期同様,全て「0」と二次的な疼痛発生を防止することができた. 【考察】 後脛骨筋,長腓骨筋,長母趾屈筋は,荷重時にその張力により腓骨を引き下げ,遠位脛腓関節が締め付けられることで足関節の固定性に寄与している.また,足関節背屈時の距骨入り込み不良は,荷重時の関節応力を高め,OA や滑膜炎を引き起こすが,これは距骨の後方組織(長母指屈筋腱,後脛骨筋)の滑走性低下により起こる.足関節内外反ROM の低下もまた,距骨下関節の適合不良を招き,慢性的な足関節炎につながる.免荷期間中に,これら3 つのポイントに集中的介入したことが,二次的OA の発症防止につながったと考える.一方,右膝外側スラストには改善が見られず,下行性運動連鎖により足関節アライメントに影響するため,本症例の今後の課題となった.

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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