主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに、目的】下肢の骨折後に、受傷側への不安感から荷重不良やバランス能力の低下、受傷側以外への身体的な症状が現れる事を臨床の場で経験することがある。今回、荷重不良に対し改善が認められたとの報告のあるバーチャルリアリティ環境(以下VR 環境)を作り出すWii Fit を利用して、荷重に伴う不安感の変化有無を検討したので以下に報告する。
【対象】対象者は、当院外来リハを週2回受けている60 代の男性である。X 年に右脛骨骨幹部骨折を受傷、X+1 年から創外固定となっており、現在も受傷側に対し不安感が残存している。対象者には研究の趣旨と目的を説明し同意を得た。
【方法】 X+2 年11 月から1 カ月の期間でWii Fit を使用したVR 環境リハ介入を実施した。実施内容は、「コロコロ玉入れ」、「バランスMii」を約20 分程度である。効果度の判定には左右の荷重量を、受傷側の不安感に対しては転倒不安感尺度を応用したものとNRS の点数で変化を測定した。
【結果】導入開始から1 か月後、介入前の荷重量が左側への偏位10Kg から0.5Kg となり、NRS では5 点から2 点、不安感尺度においては28/40 から20/40 と改善が見られた。
【考察】VR 環境を作り出すWii Fit を使用した先行研究では、静止立位で片脚に偏位していた重心位置がWii Fit 実施により偏位が減少し中心点に近づいたと報告している。また、Wii Fit 後の脳活動状態について前頭前野の活動量が増加する事も報告されている。今回、VR 環境の中での前後左右への荷重課題を取り入れた結果、課題に対して集中が高まり受傷側への荷重が無意識的に行えるようになった事で受傷側への不安感が軽減したと考えられた。
【まとめ】今回の結果ではVR 環境を作り出すWii Fit を使用したリハは荷重不良に対し有効である可能性が高いものとなった。しかし1 症例である為、今後症例数を増やし、より細かなデータ分析等を実施する事で、更なるVR 環境リハ機器の可能性を検討していきたい。