主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】 立ち上がり動作時の床反力を測定することで下肢筋力を評価できるが、報告者によって指標は様々である。今回、経時的に床反力垂直成分を検出できる重心動揺計を用いて、下肢機能を左右で分けて計測することができるか検討した。
【方法】 大腿骨近位部骨折患者9 名(平均75.7 歳)を対象に、重心動揺計を用いて椅子からの立ち上がり動作を計測した。使用機器はHUMAC BALANCE(CSMI 社)とし、左右の下肢を中心線から均等に離れた位置に接地させ、高さ45cm の椅子から左右の下肢に均等に荷重して立ち上がることを課題とした。諸家の報告を参考にして、第1 相の指標に1)RFD9/w[kgf/s/kg]( 辻ら,2011) 、2)Increase[N/s](Lindemann,2003) 、第2 相の指標に3)Peak vGRF[N/kg](Houck ら,2011)を算出した。また、バランス能力指標としてBBS とTUG を測定した。統計は、患側値と健側値の差の検定にt 検定を用い、バランス能力指標との関連を順位相関係数で検討した。本研究は、当大学倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り施行した。
【結果】 1)RFD9/w、2)Increase、3)Peak ともに患側は健側に比べて低値を示した。健側比は平均すると1)0.78、
2)0.64、3)0.83 であり、立位保持期の荷重量比(1.02)よりも小さかった。バランス能力指標との関連をみると、1)患側RFD9/w はBBS と0.80、TUG と0.64 であり、健側に比べて高い相関を示した。
【考察】 立ち上がり時の床反力を左右で分けてみるには、Peak に達するまでのタイミングが左右で異なることや二峰性を示すことがあり、諸家の両脚での評価指標は適さない場合がある。Increase はPeak 値を元に算出するため、値への影響が大きい。一方で、RFD9/w は床反力が最大増加を記録した10ms の前後90ms における増加量より換算するため、Peak のズレは関与せず算出しやすい。また、力発揮速度の評価とされるRFD9/w は、バランス能力と高い相関を示すことから予測妥当性が高く、臨床的に有用と考える。