主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】認知障害にて指示動作が困難な場合は,立位や歩行を通して理学療法(以下PT)施行することが多いが,立位,歩行の誘導も難渋する症例を経験する.そこで免荷装置を利用し安全かつ簡便に歩行練習できた症例を経験したので報告する.尚,個人情報保護に十分配慮し情報収集を行った.
【症例紹介】(1)70 歳代男性,左後頭葉皮質下出血を発症,脳膿瘍を併発し,発症後6 週目から本格的に離床開始.従命困難,自発動作はあるも右優位に運動頻度,範囲の低下あり,離床時は介助2 人以上,立位-歩行練習は困難な状況が持続.7 週目から免荷装置を利用し,断続的に両下肢の支持,振り出しを認めた.10 週目に免荷装置で50m 連続歩行,12 週目に装置なしで手引き歩行が可能となった.認知機能は意識レベルが安定し,指示理解は時々可能も,失語,半盲などが持続し,誘導に工夫,介助が必要な状況であった.(2)20 歳代女性,ギランバレー症候群で両膝立て不可,右上肢挙上困難,精神発達遅滞にて指示理解困難な状態.治療は2 週目,6 週目に免疫グロブリン療法,10 週目にステロイドパルス療法を施行.PT は3 週目から開始.5 週目に起居動作は自立,MMT は足部1,その他4 以上まで
改善.その後ADL の改善は停滞し,立位は不可,移乗介助は2 人以上の状況が続いた.8 週目に免荷装置を利用したところ,時々下肢の支持性を発揮,10 週目に免荷装置で100m 以上の歩行,12 週目に手引き歩行が可能となった. 【考察・まとめ】2 例とも潜在する運動障害は歩行可能と判断できる状態だが,認知機能の問題で介助量が多く,誘導も工夫が必要であった.免荷装置の利用で荷重,歩行の機会を安全かつ簡便に設定でき,歩行獲得につながったと考えられた.疾患の自然経過や治療による症状の改善も緩徐に認め,最終的なADL の獲得は疾患の回復が寄与して
いる.しかし,積極的な介入が難しいと思われても免荷装置の利用でより早期に運動量の確保,歩行の獲得ができる可能性が示唆された.