関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

ポスター
P-033 心原性脳塞栓症により運動失調を呈した症例―上肢の過活動軽減にて着座動作に改善がみら れた一考察―
飯田健治
著者情報
キーワード: 脳梗塞, 運動失調, 着座
会議録・要旨集 フリー

p. 217-

詳細
抄録

【はじめに】運動失調では平衡機能障害あるいは協調運動障害から,上肢の過剰努力での姿勢保持となる場面が少なくない.今回上肢の過活動軽減を図る介入により,着座動作に改善がみられたため報告する.

【説明と同意】今回症例報告を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき患者様ならびにご家族に同意を得た上で報告

する.

【症例紹介】80 歳後半の女性.疾患名は心原性脳塞栓症で病巣は右小脳ならびに脳幹部,既往に心房細動および気管支喘息があった.病前ADL は屋内外自立レベル.本人から自宅復帰,家族からトイレ動作獲得の希望があった.

【理学療法評価および経過】両肩関節屈曲および両膝関節伸展にて可動域制限,体幹および左下肢にて筋力低下,筋緊張は左脊柱起立筋と左下腿三頭筋で亢進,腹部前面部と両殿筋群で低下がみられた.感覚は表在ならびに位置覚鈍麻,踵膝試験は右下肢で陽性,躯幹失調試験ではステージ3 であった.初期評価では手すり把持にて見守り.前額面ではワイドベースで,着座中に左側への動揺.矢状面では股関節屈曲および足関節背屈不十分で平行棒を強く把持.勢いよく着座する場面もみられた.介入内容では肩甲帯に着目し,座位での姿勢修正の後に体幹筋群の協調性を図った.また,立位での重心移動訓練にて殿筋群を促通し起立ならびに着座訓練を主に実施した.最終時では,両大腿部把持し見守りで着座可能.前額面での左側への動揺は軽度だが残存.矢状面では股関節屈曲および足関節背屈は増加し勢いよく着座する場面はみられなかった.

【考察】着座では身体重心を下方へ移動させる動作で下肢への負担が増大する.体幹および右下肢の運動失調による協調性の低下が,非対称性の着座動作の一要因として考えられる.肩甲帯からの介入により体幹伸展筋群および殿筋群の賦活し,反復した動作練習から対称性の活動を図ることで着座時の動揺軽減に至ったと考える.

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top