主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】腰椎分離症は治療経過中にMRI,CT などの画像検査が用いられる.しかし,これらの画像検査には高額医療費や放射線被ばく等の問題が挙げられため,診断を補助する簡易的な骨癒合判別方法の確立は有用であると考えられる. 本研究は腰椎骨叩打による振動検査法が,腰椎分離症の骨癒合の判別に有用であるか検証することを目的とした.
【方法】第5 腰椎模擬骨を用いて正常モデル,腰椎分離症モデル,癒合モデルを作製した.振動信号の測定は,小型加速度変換器を取り付けたハンマーを用いて叩打する方法とした.測定した振動信号から,平均パワー周波数,第一最小周波数,低周波数成分と高周波数成分の積分値の相対比を算出し,各指標を,正常モデル,腰椎分離症モデル,癒合モデル間で一元配置分散分析により比較した.事後検定にTukey の多重比較を用いた.なお,本研究は人工材料を用いた生体のモデル実験であるため,倫理的配慮に関しては実施しなかった.
【結果】 平均パワー周波数は正常モデルが266.8Hz±1.4,腰椎分離症モデルが356.1Hz±8.4,癒合モデルが
258.7Hz±3.5 であり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に増加した.一方,第一最小周波数は,正常モデルが44.5Hz±1.0,腰椎分離症モデルが18.8Hz±1.3,癒合モデルが55.8±1.0 であり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に低下した.さらに,正常モデルと癒合モデル間においても有意差が見られた.相対比は,正常モデルが7.8±0.5,腰椎分離症モデルが2.0±0.1,癒合モデルが11.3±0.2 となり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に低下した.
【結論】腰椎骨叩打による振動検査法は,正常モデルと腰椎分離症モデル,および腰椎分離症モデルと癒合モデル間の判別が可能であることから,腰椎分離症の骨癒合の判別に有用であると考えられた.