主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】握力は上肢筋力,あるいは全身筋力の代表値ともなる身近な数値であり,測定には握力計が用いられる.握力計にはSmedley 型握力計,Collin 型握力計,Jamar 型握力計,電気型握力計などの幾つもの種類がある.それぞれ構造も異なり,測定値も異なると言われている.本邦では主にSmedley 型が用いられ,欧米ではJamar 型が一般的である.Smedley 型とJamar 型ではバネ式と油圧式という構造上の違いの他に,標準的な測定肢位も異なるが,それぞれの握力計での測定値をそのまま比較できるかどうかの検証はされていない.本研究の目的は,同一被験者に対し,Smedley 型とJamar 型での握力値の相違について明らかにすることである.本研究は2013 年改訂のヘルシンキ宣言に沿った研究であり,学内卒業研究倫理審査により承認された.
【方法】対象は本研究の意義,目的,方法,研究に伴う利益と不利益などについて十分な説明を受け,自らの意志で参加した20~24 歳(平均年齢21.27±0.83 歳)の健常成人30 名(男性15 名,女性15 名)であった.基礎情報(年齢,性別,身長,体重,左右の手長,利き手)と共に,Smedley 型とJamar 型それぞれ標準的な測定方法に従い,各左右5 回ずつ握力を測定した.測定の順序は乱数表を用いてランダム配置とし,それぞれの握力計での測定は30
分以上の間をあけて行った.得られた測定値よりそれぞれ高値3 つを採用し,各90 データを元に相関係数を求めた.さらに平均値の差について対応のあるt 検定を用い比較検討した.統計処理にはJMPver.5.0.1(SAS Inst.)を用い,危険率は5%未満とした.
【成績】Smedley 型とJamar 型のそれぞれの測定値間には強い相関関係があり(右r=0.87,左r=0.89)測定値の平均
(Smedley 型=右33.1kg,左=31.2kg.Jamar 型=右34.0kg,左31.7kg)に差は無かった.
【結論】Smedley 型で測定した握力値とJamar 型で測定した握力値はそのまま比較可能である.