主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】パーソナルスペース(以下PS)の侵害が姿勢の安定性に与える影響を明らかにし,介助者の適切な立ち位置の参考とするために,PS の侵害および侵害物の違い(実験1),侵害する方向(実験2)が重心動揺に与える影響を検討した.
【方法】参加者は事前に同意を得た20 代の健常成人女性17 名(実験1), 10 名(実験2)であった.本研究は倫理委員会の承認を得た(15-Io-79).課題はタンデム肢位を30 秒間保持することとし,重心動揺を計測した.実験1 では被験者の前方に侵害物(壁もしくは人)をPS 内(40cm)と外(120cm)に置き,実験2 では実験1 の結果を受けて,PS 内(40cm)の右側方もしくは後方に人を配置した.侵害物を配置しない条件を基準とした重心動揺の変化の有意性を1 標本t検定にて,条件間の比較を2 元配置分散分析およびt検定にて分析した.
【結果】実験1 では PS 内に人を配置した条件で有意に総軌跡長が増加し(p<0.05),壁を配置した条件で有意に減少した(p<0.05).またY 方向動揺平均中心偏位では人をPS 内に配置した条件で有意に後方に偏位した(p<
0.05).実験2 ではX 方向動揺平均中心偏位について右側方に人を配置した条件で有意に左方向に偏位した(p<
0.05).
【考察】人がPS を侵害した場合に姿勢が不安定性になった結果から,人が侵害となると目線が合うことで圧迫感や緊張感が生じることが不安定さを引き起こしたと考えた.また前方のPS を侵害した場合,拒否反応として重心が後方へ偏位したと考えられた.そのため実験2 では侵害の方向による姿勢の安定性を検証した.その結果,PS の右側方を侵害した場合に反対への重心偏位が認められた.これは侵害物が視界に入る側方のPS が侵害されたことによる拒否反応と考えられた.
【まとめ】PS 内に人が入ることはバランスを崩す要因になり,前方・側方の侵害は反対へ逃げるように重心が偏位するため,臨床において介助者の立ち位置に配慮する必要がある.