主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】在宅で生活している要介護高齢者の多くは低栄養の恐れがあり,筋量減少など様々な運動機能に影響を及ぼすフレイルサイクルに陥りやすい.介護予防はフレイルサイクルを絶つこと,運動と低栄養を防ぐことが重要である.そこで今回の目的として,筋力と筋量を定量的に評価し,定期的な運動がもたらす栄養状態と筋力,筋量の関係を調査した.
【方法】対象は通所リハビリ利用者26 名(男性5 名,女性21 名,平均年齢83.2±8.4 歳).簡易栄養状態評価表
(MNA-SF)の点数別に栄養良好群10 名,低栄養のリスクのあるリスク群12 名,低栄養群4 名の3 群に割り付け.筋力測定にはHHD(ANIMA 社製μTas F-1)を用い,膝伸展筋力をベルト固定法で測定.測定数値を体重で割った体重支持指数(以下WBI)を筋力の評価指標とした.筋量測定には体組成計(TANITA 社製RD-901)から算出される身体総蛋白質量(以下%MV)を評価指標とした.3 群共通の介入として,80%1RM で膝伸展運動を筋発揮張力維持スロー法で実施.週2 回の頻度で6 週間実施.介入前後のWBI と%MV を比較検証.繰り返しのある二元配置分散分析で検定.
【倫理的配慮,説明と同意】対象者に研究の主旨,方法,個人情報の厳守について説明を行い,同意を得た.
【結果】WBI は3 群全て介入後の数値が増加し,%MV は3 群全て介入後の数値が減少した.WBI のp 値は標本間
因子0.73,標本内因子<0.01,交互作用0.91 となった.%MV のp 値は標本間因子0.02,標本内因子0.03,交互作用0.63 となった.
【考察・まとめ】WBI の数値増加は栄養状態によって著明な差はなかった.WBI が増加し,%MV が減少してしまった原因としては体組成計の測定方法に不備があったと考えられた.筋量の評価は不十分だが,栄養状態に関わらず適切な負荷量で定期的な運動を行えば,筋力が向上する可能性が示唆された.今後は,筋量の評価指標として通所リハビリでも使用できる信頼性のある方法を検討する必要がある.