主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】脳卒中片麻痺者に対し足関節底屈筋群の筋活動を促し、歩行能力に及ぼす影響を検証した。
【対象】40 歳代男性、左視床出血、右片麻痺、介入開始時点で発症後3 週間を経過していた。随意性はStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)にて下肢遠位テスト2 点であった。感覚は深部・表在感覚ともに軽度鈍麻で、筋緊張は弛緩性であった。歩行はT-cane を使用して近位監視にて可能であったが、右立脚終期から遊脚初期にかけて足関節周囲筋群の活動が低下していた。なお、事前に研究内容を十分に説明し、同意を得た後に実施した。
【方法】介入デザインはAB 型デザイン(A 期;非介入期、B 期;介入期)を使用し、各期は5 日間とした。通常の運動療法を40 分施行後に、介入期では足関節底屈筋群の活動を促した。方法は、座位での足関節底屈運動と立位での踵上げ運動を、電気刺激装置を用いながら各10 回×3 セット施行した。電気刺激装置は帝人ファーマ株式会社製のWalk Aide を使用した。電極パッドは腓骨小頭下方と長腓骨筋の筋腹に貼った。非介入期は足関節背屈運動を座位と立位にて介入期と同様に電気刺激装置を使用して同じ回数施行した。電極パッドは腓骨小頭下方と前脛骨筋に貼った。AB 期とも介入後毎に至適速度での10m 歩行を実施して歩行速度を算出した。解析は中央分割法を用い、非介入期からceleration line を求め,延長したceleration line と比較した上位数を視覚的に確認した。
【結果】 A 期では平均0.81±0.03m/s、B 期では0.88±0.08m/s であった。A のceleration line と比較して、B の介入期全てで増加した。SIAS 下肢遠位テストは5 点に改善した。
【考察】 歩行速度の上昇は麻痺側足関節底屈筋群の筋活動を促したためと推測された。今後は症例数を増やし順序効果の影響も検討していきたい。