主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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[はじめに,目的]変形性股関節症患者は人工股関節全置換術(以下,THA)後,靴下着脱動作の獲得に難渋する.
靴下着脱動作は可動域に着目した報告が多いが,筋力との関係に関する報告は少ない.その為,本研究の目的は片側THA 施行症例を対象とし,靴下着脱動作と術前股関節周囲筋力との関係を明らかにすることとした. [方法]対象は2015 年4 月から2016 年1 月に当院で片側THA を施行した7 症例(男1,女6,年齢66.5±9.5 歳,身長
149.4±11.4cm,体重52.6±8.8kg)であった.術前評価より,後方視的に分析した.抽出項目は,術前の体幹筋力(屈曲,伸展),股関節筋力(屈曲,伸展,外転),膝関節筋力(屈曲,伸展),荷重時痛(NRS),術後靴下動作獲得日数とした.各筋力の評価はハンドヘルドダイナゴメ-タ-(徒手筋力計モ-ビィ MT-100,酒井医療社製)を使用した.体幹屈曲,伸展筋力の計測は遠藤らの報告に準じ,股関節,膝関節筋力の計測は徒手筋力検査の肢位に準じた.各筋力の計測は等尺性収縮にて計測し,各対象者の最大値を体重で除し正規化した値を代表値とした.各項目の関係はピアソンの相関係数を用い,有意水準はp<0.05 とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言に則り実施され,対象者には本計測や評価の趣旨について口頭と書面にて十分な説明を行い,書面にて同意を得た上で行われた.[結果] 靴下動作獲得日数は16.4±4.5 日で,股関節屈曲筋力(1.0±0.5N/kg,r=-0.84),膝屈曲筋力1.0±0.3N/kg,r=-0.8),体幹伸展筋力(1.5±0.5N/kg:r=-0.79),荷重時痛(5.7±2.4,r=-0.76)と有意な負の相関を示した. [考察]靴下着脱動作は体幹の保持と下肢の引付けが必要になる.その為,靴下動作獲得日数と体幹伸展筋力や股関節,膝関節の屈曲筋力に有意な負の相関を示したと考えた.[まとめ]術前の体幹,下肢筋力は靴下着脱動作の早期獲得に影響を与える可能性が示唆された.