関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-075 肥満者の立位アライメントと静的バランス能力の特徴
山本苑子南愛子佐藤満
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p. 75-

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抄録

【目的】 肥満者の身体的特徴を実験的に明らかにした文献は少ない。本研究は、肥満者の脊柱アライメントと静止立位での重心移動能力の特徴を明らかにする。

【方法】 文書による説明で同意を得た肥満男性10 名(BMI25・腹囲85cm 以上、平均年齢32.6±7.5 歳)のBMI、腹囲、胸腰椎アライメント、最大歩行速度、静止立位重心動揺、TUG を測定した。胸腰椎アライメントはスパイナルマウスを用いて胸椎後弯・腰椎前弯角の大きさを、静止立位重心動揺は望月らが考案した姿勢安定度評価指標IPS を算出した。各項目の関係をピアソンの相関係数を用いて分析した。

【結果】 腰椎前弯角度とBMI、腹囲との相関はなかった。胸椎後弯角度とBMI、腹囲とは負の相関を認めた。最大歩行速度は、BMI、腹囲と負の相関を認め、TUG はBMI、腹囲との相関は認めなかった。IPS は、BMI と正の相関を認め、前後方向への重心移動の要因がより貢献していた。

【考察】 姿勢観察により肥満者の腰椎は前弯が増大しているとする文献は多いが、肥満者での腰椎前弯の増大は認められず、胸椎後弯が減少していた。肥満者の姿勢は一見ハイパーエレクト姿勢に見えるため腰椎前弯が増強しているように見えるが、実際はフラットバック姿勢に近いと示唆された。胸椎後弯の減少は内臓脂肪等により胸郭が押し上げられた結果と考えられる。また、腰椎の前弯が増えないことは、腹部内容物の収蔵に有利である。最大歩行速度は肥満者で減少し、TUG は肥満との関連がないという結果は先行研究と一致していた。また、肥満者は前後左右への能動的な重心移動能力が高かった。これは日頃から重い体重を支えて姿勢を保持しているため、重心制御の能力が向上していると考えられる。さらに、前後方向の重心移動能力が高い要因を説明するためには、今後足趾を含めた下肢体幹筋力の評価等が必要である。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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