主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 138
【目的】
変形性膝関節症(膝OA)は疼痛と軟骨変性を主症状とし,軟骨変性の予防に,ACLT 切断(ACLT)後の脛骨前方引き出し(異常関節運動)の制動が有効とされている.疼痛については,脊髄後根神経節(DRG)で,疼痛関連因子CGRP が小細胞及び中細胞で,SP が小細胞で発現増大する報告がある.そこで,膝OA における異常関節運動の制動が疼痛に与える影響を,CGRP,SP に着目し検討することを目的とした.
【方法】
10 週齢Wistar 系雄性ラットを,膝OA モデルとしてACLT 群,関節制動(CAM)群,sham 群の3 群に3匹ずつ分類した.術後8 週で脊椎を採取,L4DRG レベルで凍結切片を作成し,CGRP,SP の蛍光免疫組織化学染色を行った.陽性細胞の面積を小(<500μm2),中(500- 1200μm2)に分類後,陽性細胞におけるサイズ別の割合を算出し,一元配置分散分析を行った.なお,本研究は所属動物実験倫理委員会の承認(28- 2)を得て実施した.
【結果】
CGRP,SP 共に各群で小,中細胞に発現した.各抗体陽性細胞サイズの割合に有意差は認めなかったが,ACLT 群は他の2群に比べてCGRP の中細胞発現割合が増大傾向を示した.また,SP の小細胞発現割合はACLT 群が他の2 群より大きい傾向を認めた.
【考察】
CGRP 陽性細胞は,先行研究によりOA モデルで中細胞の割合増大が報告されており,本研究においても類似した傾向が得られた.中細胞に発現するCGRP はアロディニアに関与するため,ACLT 群では疼痛の慢性化が考えられる.SP の結果からも,ACLT 群で疼痛が大きい可能性が考えられる.これまでに,異常関節運動の制動はメカニカルストレスを減少し,炎症を抑制することが示されている.ゆえに,異常関節運動の制動は,炎症性疼痛関連因子の陽性細胞サイズ割合の変化を抑制する傾向があると言える.このことは,膝OA の理学療法として,関節運動を正常に近づける介入が疼痛を抑制する傾向があると考えられる.