主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】
鎖骨骨折の中で骨幹部は約80%を占める最も多い骨折箇所であり,骨癒合が良好で機能的予後も良いことから保存療法が第一選択とされている.しかし近年,手術療法における良好な成績も報告されており,転位の著しい骨折では手術療法が選択される.今回,鎖骨骨幹部骨折を呈した手術療法と保存療法の適応境界例を経験し,良好な経過を得たため報告する.
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,本症例に対し発表目的の説明を行った上で同意を得た.【症例】
15 歳女性.授業の合気道で受傷.左鎖骨骨幹部骨折と診断.受傷後2 日目より鎖骨バンドで固定を開始したが転位の改善が乏しく,手術療法を検討するも本人の希望より保存療法を実施,6 週間の安静期間を経て理学療法開始となった.
【経過】
初期評価時の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)38.5 点.安静時痛,動作時痛があり,肩関節屈曲
90°,外転80°と可動域制限を認めた.受傷後8 週目で仮骨形成の進行を確認し装具を除去,関節可動域練習や筋力強化を継続し,転位の拡大なく良好な骨癒合を認め,15 週目でスポーツ復帰をした.復帰時JOA score97 点.
【考察】
鎖骨は肩甲帯の動作の支点となる役割を担い,肩甲骨の動きに付随して運動し,上肢挙上90°以上で胸鎖関節を軸に挙上と後方回旋をする.このことから骨癒合が不十分な時期には骨折部へ剪断力が加わらないよう肩甲骨固定下にて挙上90°以内で関節可動域練習を実施した.固定除去後は挙上時に肩甲骨のwinging を認めたことから,上腕の動きに合わせて徒手的に肩甲骨の操作をし,また肩甲骨固定筋の強化も実施した.鎖骨骨折の手術療法における固定期間は2~3週であり,6~12週でスポーツ復帰とされている.本症例は手術療法と比較し固定は長期に及んだが,癒合部の固定性が強固でない状態でも鎖骨の運動学的機能を考慮し介入したことで,良好な結果を得ることができたと考える.