関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-024
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フレッシュマン
杖歩行獲得に至るが、歩行初期の股関節周囲の疼痛が消失しなかった右大腿骨転子部骨折例
氷鉋 優輝入倉 伸太郎木島 隆
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抄録

【はじめに】右大腿骨転子部骨折を受傷し,内反転位の固定術施行後,疼痛,右股関節内転-内旋位が著明に見られた症例に介入し,杖歩行自立まで至るが,歩き始めの右大腿内側~膝後面に疼痛が出現した症例を経験したため報告する.

【症例紹介】80代女性.H30.11.8に自宅で転倒し,受傷. H30.11.12手術(γネイル)施行.H30.12.18当院転院.入院翌日の評価は,ROM(右/左)外転5/15,外旋0/40,内旋5/30で,疼痛による制限を認めた.疼痛は,安静時に受傷部にNRS1,荷重時に右股関節内側~前面にNRS3であった.FIM66点であった.

【治療方針】右股関節外転-外旋運動時に疼痛を認め,疼痛を回避するため,右股関節内転-内旋位をとっていた .加えて,安静-運動時痛により,大-中-小殿筋出力低下を招き,股関節伸展不全が生じていた.結果,大-長内転筋による右股関節伸展の代償が生じ疼痛が増強したと考えた.そのため,徒手的に大-長内転筋の代償を抑え,大-中小殿筋活動発揮を促すことで動作パターンを修正し,疼痛緩和が図れないかと考えた.治療は,大-長内転筋緊張の調節や,難易度を考慮し,代償が出現しにくい動作練習から行った.尚,治療方針は患者及び家族に書面にて説明し,同意を得た.

【治療方法-結果】大-長内転筋緊張の調節や,循環改善を目的に背臥位で,相反性抑制を用いた右股関節外転運動や自動介助運動を行った.動作練習は,右股関節外転-外旋位を徒手にて保持し,高座位からの起立や,立位での重心移動,ステップ練習の順に課題を行った.結果,ROMは股関節外転20/30,外旋15/40,内旋40/30,安静時,荷重時の疼痛は消失し,FIM106点,杖歩行自立となった.しかし,新たに右IC~LR時に大腿内側~膝後面にNRS2の疼痛が出現した.

【考察】症例は,歩き始めに,右膝や足尖部が,内側に向いていないか確認するため,視線を下方に落とし,右股-膝関節は屈曲位となっていた.その状態で歩き出すため,大-長内転筋の過剰な右股関節伸展作用が働くことで,過剰収縮による筋スパズムを招き,右IC~LR時に疼痛が出現したと考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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