関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-038
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フレッシュマン
Pushingに対する体性感覚情報を基にした理学療法の経験
横山 恵太石田 茂靖坂井 亮太佐藤 祐
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抄録

【はじめに】先行研究において、Pushingに対し、視覚フィードバックを利用した介入が推奨されている。しかし、臨床では半側空間無視を併発し、非麻痺側に注意が向くことで身体図式や姿勢制御が阻害されるケースもある。今回、長下肢装具を使用し適切な体性感覚情報入力と視覚情報を制限した中で介入したことでPushingが軽減した症例を経験したので報告する。

【症例】右被殻出血による左片麻痺を呈した60歳代男性。 発症より18病日経過。Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)Ⅳ−Ⅳ−Ⅴ.表在・深部感覚軽度鈍麻。Scale for Contraversive Pushing(以下SCP):3/6点。Catherine Bergego Scale(以下CBS):27/30点。立位軽介助、歩行は麻痺側へ傾斜し中等度介助。

【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分に留意し、説明と同意を得た。

【方法・介入】Pushingの改善に向け、視覚フィードバックを利用した介入を行ったが、半側空間無視の影響もあり、非麻痺側への注意が過剰となり改善は得られなかった。そのため、ついたてを置き視覚情報を制限し長下肢装具を利用した対称的な姿勢の中で練習課題を行った。

【結果】BRS:Ⅳ−Ⅳ−Ⅵ、感覚障害は左右差なし。 SCP:0/6点、CBS:7/30点。10m歩行テスト8秒/18歩。 対称的な姿勢の獲得により、歩行はフリーハンドにて自立となった。

【考察】本症例は、Pushingと半側空間無視を併発しており、視覚フィードバックに頼ると非麻痺側からの視覚情報に対し、左半球からの半球間抑制による非麻痺側への注意が助長されてしまうと考えられた。これに対し、長下肢装具を利用し適切な感覚情報を基にした姿勢制御・対称姿勢の実現と視覚情報の制限をすることで非麻痺側への過剰な注意を是正できたと考える。その結果、Pushingは軽減し、歩行自立となった。Pushingの改善に対して、症例によっては視覚フィードバックだけでなく、体性感覚情報にも目を向ける必要性があることが示唆された。

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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