関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-037
会議情報

フレッシュマン
聴神経鞘腫開頭摘出術後の症例について~骨盤が安定し、ふらつきのない歩行を獲得した一症例~
尾添 幸平
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】今回、聴神経鞘腫開頭摘出術を施行し、既往歴に水頭症がある症例に対し、歩行時のふらつき・すり足の改善を目的とした理学療法介入を経験し、歩行機能改善を認めたため以下に報告する。

【方法】対象は、聴神経鞘腫開頭摘出術を施行した60歳代女性である。HOPEは自宅退院し、家事をできるようにであった。感覚障害は陰性。失調症状陰性。両側の大殿筋・中殿筋・腸腰筋・腹筋群のMMTは3。FBSは41点、10m歩行テストは12秒、TUGは24秒であった。座位・立位では骨盤前傾位であり、腰椎前彎が増大されていた。 介入初日の歩容は、右側遊脚期のクリアランスが低下しており、右側MSwからTSwの際に骨盤後傾・腰椎前彎の増強による代償運動により下肢を振り出していた。また、左ICからMstの間でふらつきが生じていた。さらに両側立脚期全体で骨盤の前傾が著明であり、MStからTStにかけて十分な股関節伸展が得られず立脚時間が短縮していた。理学療法では骨盤安定性に着目した筋力増強訓練を実施した。本報告はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に口頭にて十分に説明し同意を得た。

【結果】両側の大殿筋・中殿筋・腸腰筋・腹筋群のMMTは4、FBSは53点、10m歩行テストは8秒、TUGは11秒と機能向上を認めた。また、歩容においても代償運動、右側遊脚期のクリアランス改善、ステップ長の拡大、ふらつきの消失を認めた。

【考察】殿筋群、腹筋群の筋力改善に伴い、右側のMSw からTSwの代償は消失し、座位・立位姿勢にてみられる腰椎前彎が軽減したと考える。また、Kapandjiらは、立脚初期に主に大殿筋上部繊維が骨盤の安定性に寄与する。立脚中期に股関節が0°付近まで伸展すると中殿筋が主動作筋として作用すると述べており、本症例も殿筋群の筋力改善が見られたことで、骨盤の不安定が改善し、左ICからMstの間でふらつきが消失したと考える。また大殿筋筋力改善により立脚時の骨盤前傾が改善し、ステップ長が改善したと考える。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top