関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-047
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フレッシュマン
Y-graft再置換術中,下肢急性動脈閉塞症を合併し術後単麻痺を呈した1症例〜BWS歩行器による介入効果〜
石井 頌平片倉 哲也菅原 康介
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抄録

【はじめに】体重免荷式(Body Weight Support:以下BWS)歩行装置を用いた歩行練習は筋活動の分析など基礎的知見が展開され,脳卒中や脊髄損傷患者など様々な疾患への有効性が示されている.しかし,血管障害に対するBWS歩行練習の効果に関する報告は少ない.今回,術中下肢急性動脈閉塞症(以下AAO)を合併し,術後単麻痺を呈した患者に対してBWS機能付き歩行器使用にて歩行能力改善を認めたため報告する.

【症例】70代男性.感染性腹部大動脈瘤に対し,stentgraft内挿術施行.入院中に感染瘤伸展による腰椎椎間板炎,圧迫骨折,腸腰筋膿瘍の診断.術翌日より理学療法開始となり,術後10日にて基本動作自立,杖歩行監視となった.しかし,術後21日に感染瘤拡大を認め,Y-graft再置換術施行.術中,左総腸骨動脈にAAOを合併.術後初期評価は左下肢筋力低下(MMT左下肢全般2)を認め,基本動作は中等度介助,歩行困難であった.なお,本発表に際してはヘルシンキ宣言に則り対象者に趣旨等を説明し,紙面にて同意を得た.

【PT内容および経過】Y-graft再置換術後左下肢筋力低下に加え,腰椎椎間板炎,圧迫骨折による腰痛増悪も認めた.そのため,コルセット着用下での通常リハプログラムに加え,介助歩行実施が困難であったため,BWS 機能付き歩行器使用下での立位,歩行練習を実施した.徐々に免荷量を漸減し,歩行介助量軽減を目指したところ,術後20日目に免荷不要,歩行器歩行実施が可能となった.術後30日の最終評価はMMT左股関節周囲筋3,その他左下肢4.基本動作は軽介助,歩行は歩行器使用し監視で連続50m可能となった.

【まとめ】BWS歩行装置活用における歩行能力の改善は、脳卒中や脊髄損傷患者の報告が主だが,本症例のようなAAO患者へも有用な可能性がある.通常の筋力強化練習に対して,負荷量,アライメントの設定が細かく行える点,反復した同一刺激を動作練習を通して実施できる点などが他疾患での報告同様,歩行能力の改善へ繋がったと考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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