関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-050
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フレッシュマン
生理学的根拠に基づく離床により自宅退院に至った敗血症性ショックを呈した一症例
坂本 湧希奥山 和紀星野 翔子
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抄録

【はじめに】一般に重症患者の早期離床は身体機能や基本動作の改善に有効とされているが,全身管理が優先される場合には早期離床や運動療法は禁忌とされる.今回,穿孔性腹膜炎を契機に敗血症性ショックに至った症例に対して,生理学的根拠および先行研究を基に理学療法を行った結果,有害事象なく自宅退院へ至ったため報告する.

【症例紹介】80歳代女性.診断名は下行結腸穿孔,合併症は穿孔性腹膜炎に伴う敗血症性ショック,既往歴はリウマチ性関節炎であった.病前ADLは娘との二人と暮らしで自立していた.尚,発表に際し本人,家族に同意を得た.

【経過および治療内容】当院入院後,下行結腸穿孔に対し同日に緊急でハルトマン術を施行し翌日(POD1)から理学療法依頼があった.術後は人工呼吸器による呼吸管理,右鼠径部からバスキュラーカテーテルを留置して持続的血液濾過透析(CHDF)を開始し,エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)をPOD2まで施行した.POD1 はノルアドレナリン(NAD)0.25γの投与下で,平均動脈圧(MAP)57mmHgであったため,未介入とした.POD2はNAD0.12γの投与下でMAP80mmHg台であり,体位ドレナージやギャッチアップ,ROMexを実施した.POD3に抜管,POD5にCHDFが終了し,ICU退室となった.POD5から座位訓練開始,その後から徐々に運動療法を実施した.POD20で病棟ADL自立となり,POD40 で自宅退院となった.

【結果】理学療法介入にて有害事象なく自宅退院となり,退院時Barthel indexは90点(減点項目:排便‐10点),10m歩行は18.65sec/26steps,6分間歩行は235mであった.

【考察】本症例は敗血症による血液分布異常性ショックと術後侵襲により循環血液量が減少し,術後数日は急性循環不全を生じており,循環血液量減少性ショックを呈していた.そのため,POD1は臓器還流量の維持が優先される必要があると考えられた.POD2に関して,MAP は増加傾向だったがNADは0.1γ以上投与されており,先行研究では座位は除外基準であり,ベッド上までの介入とする必要があったと考えた.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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