関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-049
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フレッシュマン
慢性心不全急性増悪による廃用症候群を呈した症例-買い物のための歩行自立を獲得した一例-
川浪 紗矢香
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抄録

【はじめに】今回症例に対し、運動耐容能に着目した理学療法介入を施行した。買い物のための歩行自立獲得に成功した症例を経験したため、その介入方法と効果を報告する。

【対象】80歳代女性。肺炎、慢性心不全急性増悪にてA 病院へ入院し、リハビリテーション目的で当院へ転院。 既往歴に心房細動、高血圧症、肺炎、甲状腺機能低下症等がある。買い物は自宅から100m離れたコンビニを利用予定で、途中40m程緩やかな坂道がある。病前は日中室内生活が中心。

【方法】トークテストにて有酸素運動の可否を判断し身体活動能力質問表にて最小運動量を把握後、4点杖歩行での有酸素運動を週7回、低強度レジスタンス運動を週3 回行った。運動強度はBorgスケール11 〜13、目標心拍数は約130拍/分とした。有酸素運動と低強度レジスタンス運動の時間は合計1日30分×3回とし、2か月半実施。

【倫理的配慮】症例報告に際し、ヘルシンキ宣言に則り、御本人・御家族に説明し同意を得ている。

【結果】6分間歩行テストは4点杖歩行にて20m軽介助中断から連続260mへ、脈拍の安定化やリカバリータイムの短縮を認めた。体組成計にて骨格筋・平滑筋・体水分を含む筋量は32.8kgから35.85kgへ、筋力は股関節内転筋群を除きMMT4レベル以上となった。シルバーカー歩行は平地連続360m自立、緩やかな坂道歩行自立に至った。

【考察】運動療法による末梢効果にて酸素供給能が改善、心血管系の負荷が低下したことで全身の疲労感軽減に繋がり、大筋群を中心とした骨格筋量、筋力、筋持久力の向上が運動耐容能改善に関与したと考える。

【おわりに】買い物手段獲得の他、御本人・御家族間で交換ノートを作成し、食品の塩分量や血圧、体重を御本人が、水分摂取量や服薬状況を御家族が記載しお互いに確認して頂くこととした。食事と運動療法に加え家族を含めた教育指導を行い、心不全を悪化させない生活習慣を身に着けて頂くことが本人のQOLを守る上で重要だと感じた。

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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