関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-066
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フレッシュマン
動作能力と家族介護力から予後予測を行い自宅退院が困難と考えられた症例
荻野 沙月五十嵐 達也田中 真稔宮田 一弘
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抄録

【はじめに】大腿骨近位部骨折を呈した患者の退院先に関わる要因として,認知機能,受傷前歩行能力,退院時Functional Independence Measure(FIM),同居者の有無などが挙げられる.それらに加え,家族介護力を定量的に評価する「家族介護力スコア」の重要性も示唆されている.今回,この家族介護力スコアとActivities of Daily Living(ADL)能力から予後予測を行い家族の介護への協力により自宅復帰に至った超高齢症例について報告する.

【説明と同意】本発表はヘルシンキ宣言に基づき,本症例に口頭で説明し書面にて同意を得た.

【症例提示】症例は大動脈弁狭窄症の手術後に転倒し,大腿骨転子部骨折を受傷した90代女性である.X日に転倒,X+6日観血的整復固定術施行,X+18日リハビリ目的に当院転院となる.X+19日の介入開始時,創部の疼痛により体動困難,ADL全介助レベルであった.介入を続けるも身体機能,ADL能力は大きく変化せず介助量軽減には至っていない.自宅では夫,次男夫婦との4 人暮らしであり,病前は杖歩行であった.

【経過/考察】X+50日まで介入を続けたが,動作介助量の軽減は認めたもののFIMの大幅な改善はみられなかった(38点→48点).家族介護力スコアとは70歳未満で介護に専念できる健康成人の介護力を10点と決め,減点方式で患者の生活に関わる家族全員について採点しその合計点を評価点とするものである.これは脳卒中患者の退院先判別を目的に作成されたものであり介護者の介護潜在能力を評価するものとされる.このスコアを大腿骨近位部骨折患者に用いた場合,退院時FIM合計点とスコアの総和102.5点が自宅退院判別の境界点となると報告がある.症例は54点と自宅退院の境界点を下回る結果となり自宅退院は困難と考えられたが,介護サービス調整,家族指導によって自宅退院となった.退院先判別に予後予測は重要だが自宅復帰のために家族の協力や環境調整も重要と改めて実感した.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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