主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2019/10/26 - 2019/10/27
【はじめに】高齢者に対する離床プログラムは、廃用予防や本人、介護者のQOL向上に重要であると言われているが、高齢者や長期臥床後の離床に対しては起立性低血圧等のリスクがあり慎重に行われる必要がある。今回長期臥床後の高齢者への離床を目的としたプログラムを実施したので、考察を加え報告する。
【症例紹介】90歳代女性、診断名は肺炎、廃用症候群。 現病歴は2018年6月に脱水にてA病院へ入院。入院中に誤嚥性肺炎を発症。経口摂取困難となりCV管理で2018 年8月長期療養目的に当院へ入院となった。2018年11月理学療法開始。入院前ADLは全介助。発表について口頭にて家族の同意を得た。
【理学療法評価】初回評価は意識レベルはJCSⅡ-20。コミュニケーションは重度の難聴あり、口頭指示は不可、表出は短文レベルで可能であった。身体機能は四肢に著明な関節可動域制限を認め、臥位にて円背姿勢が認められた。動作は全介助で自発運動は見られなかった。発症時から離床は行っておらず約5か月ベッド上で臥床されていた。家族からは車椅子乗車の希望が聞かれた。
【経過】理学療法開始後5日目より車椅子乗車を開始。バイタルサイン著変なく10分乗車可能であった。33日目より起立練習を開始。起立、立位保持は膝折れを認め平行棒内重度介助であった。離床、起立開始後より覚醒向上、右上肢筋緊張の軽減、関節可動域改善を認め、起立、立位保持は膝折れなく中等度介助となった。日常生活では発話量と右上肢使用の機会増加を認めた。機能向上に伴い家族からは動けるようになった、できる事が増えた等前向きな発言が聞かれた。4か月後に家族よりトイレでの排泄希望が聞かれ新たに介助下でのポータブルトイレ使用を目標に設定した。
【考察】本症例の介入を通して離床プログラムは長期臥床後の高齢者へも可能であり、さらに身体機能、基本動作能力の向上を通し家族の介護に対する意識の変化を得る事が可能となる事が考えられた。