関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P-081
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維持期における頸髄不全損傷者の日常生活動作の変化
廣島 拓也永井 公規坂下 智哉松尾 美鈴野崎 和昭山崎 寛史運野 沙央里掬川 晃一中村 学
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抄録

【目的】頸髄不全損傷者の運動麻痺の程度や回復の過程は多岐に渡り,リハビリテーションの目標設定に難渋する.先行研究によると,神経学的な回復は約18 ヶ月に渡り続くとされ,維持期まで回復が継続することが報告されている.しかし,日常生活動作(以下,ADL)の獲得について検討されているものは少ない.本研究の目的は,維持期における頸髄不全損傷者のADLの変化を考察し,目標設定の一助とすることとした.

【倫理的配慮】得られたデータは匿名化し,個人情報の取り扱いには十分に注意した.

【対象】2016年7月から2018年8月までに当院障害者病棟に入院した,入院時の改良Frankel分類がC1またはC2の頸髄損傷者9名(平均年齢:61.0歳±15.9歳,男性7名,女性2名)を対象とした.除外基準は、障害者病棟入院期間が半年未満の者,運動機能に影響を及ぼす特筆すべき既往を有する者とした.

【方法】受傷後8 ヶ月時点(以下,8M)と受傷後13 ヶ月時点(以下,13M)のFunctional Independence Measure(以下,FIM)の運動項目について,診療録より後方視的に抽出した.8Mと13MのFIM運動項目の合計点および各項目の得点について中央値を算出し,さらにWilcoxonの符号順位検定を用いて比較した.統計解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)を用い,有意水準は5%とした.

【結果】FIM運動項目の合計点の中央値(四分位範囲)は,8Mが25(21-62),13Mが48(29-74)であり有意差があった.各項目では,下衣更衣は8Mが1(1-3),13Mが4(1-6),車椅子・ベッド間の移乗は8Mが2(2-6),13Mが6(3-6)であり2項目で有意差があった.

【考察】FIM運動項目の合計点が増加しており,ADLの向上が示唆された.各項目では,下衣更衣および車椅子・ベッド間の移乗の得点の増加がみられ,下肢機能が関わるADLが改善する傾向が示唆された.そのため,回復期終了後の維持期におけるリハビリテーションでは,下衣更衣や移乗動作など下肢機能に焦点を当てた目標設定が有用であると考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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