主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
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【はじめに】従来,長下肢装具は重度片麻痺患者に用いられており,治療効果の報告も散見されるが, BRSV~VI の軽度片麻痺患者に対する治療効果の報告は少ない.今回,脳卒中発症早期より軽度片麻痺患者に対して長下肢装具を用いた歩行練習を実施し歩行速度が向上したため,以下に報告する.なお,本発表に際して,ヘルシンキ宣言に則り対象患者に趣旨を説明し,紙面にて同意を得た.
【症例】60 代男性.右放線冠塞栓性脳梗塞にて入院.第1 病日で左下肢BRSVI を認め,歩行は監視レベルであったが,第4 病日より運動麻痺増悪を認めた.歩行再開までは安静度に従い訓練を実施していた.第12 病日より歩行練習を再開し,左下肢BRSV, MMT 股関節伸展4 外転2 膝関節伸展4,下腿三頭筋MAS1 を認めた.歩行は軽介助を要し,左IC では足底接地,左LR で膝折れを認め,左Mst では前上方への重心移動が少なく,左Tst で股関節伸展不十分であり,Buckling Knee Pattern(以下BKP)のような歩容を呈していた.
【PT 内容・結果】第14 病日に長下肢装具装着下で歩行練習を実施した.方法は片脇介助下にて左右の重心移動を促し,倒立振り子モデルを意識しつつ実施した.結果,10m 歩行テストは長下肢装具使用直前で27.7 秒,37 歩,使用直
後で15.9 秒,26 歩と歩行速度向上と歩幅拡大を認めた.また,歩容も改善され,長下肢装具使用前と比較し左IC では踵接地が可能となり,ロッカー機能が改善された.左LR での膝折れは認めず,左Mst で重心の前上方移動が拡大し,左Tst で股関節伸展角度が拡大した.
【まとめ】今回,歩行練習において長下肢装具を使用した前後で歩容の改善および歩行速度向上を認めた.長下肢装具を使用しつつ重心移動を促したことで股関節周囲筋の筋出力向上が得られ,倒立振り子モデルを形成できた点が歩行速度の向上へ繋がったと考える.本症例は,BKP のような歩容を呈しており,このような症例に対して急性期から長下肢装具を用いた歩行練習は歩行速度向上に有用な可能性がある.