主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 164-
【目的】前屈時痛を有する非特異的腰痛患者と健常成人の身体的特徴を比較すること.
【方法】対象は腰痛継続期間3か月未満で当院を受診し, 理学療法が処方された前屈時痛を有する非特異的腰痛患者(腰痛群)7例と腰痛歴のない健常成人(健常群)12例とした. 対象者にはヘルシンキ宣言に基づき, 研究主旨を説明し同意を得た. また, 善衆会病院倫理委員会の承認を得て行われた. 全対象者に対し, Spinal mouse を用いて, 安静立位と立位前・後屈の脊柱可動域を計測した. 股関節可動域は, 伸展, 股関節90°屈曲位と中間位の内外旋の計測を左右で行った. 統計学的解析には, マン・ホイットニのU 検定と対応のないt 検定を用いた.
【結果】脊柱可動域は, 前屈可動域と腰椎屈曲・伸展可動域において, 腰痛群と健常群で有意差が認められた(p<
0.05). また, 股関節可動域は, 股関節90°屈曲位総回旋(内外旋の和)・外旋において, 左右共に2群間で有意差が認められた(p<0.01). 中間位内外旋は2群間で有意差は認められなかった.
【考察】腰痛者では, 全運動方向で腰椎可動性が低下すると報告されている. 本研究では対象者が前屈時痛を有し, 口頭指示を設けたことも前屈可動域制限につながったと考えられる. 股関節90°屈曲位外旋ROM 制限が生じた原因は, 中殿筋・小殿筋後部線維の伸張性低下による可能性が考えられた. 股関節回旋可動域制限は, 腰痛の重要な機能障害とされている. また腰痛診療ガイドラインでは, 急性・亜急性腰痛者には活動性維持や運動療法が推奨され, ホームプログラムは, 患部外から指導することが推奨されている.
【結論】前屈時痛を有する非特異的腰痛患者では, 股関節90°屈曲位総回旋ROM・外旋ROM が制限されることが明らかとなった. 理学療法評価では, 回旋ROM が重要となる可能性が示唆され, ホームプログラムとしては, 股関節外旋ROM エクササイズの指導が勧められる可能性がある.