主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 43-
【目的】 当院における人工膝関節全換術(以下TKA)術後の1)膝屈曲ROM の推移を明らかにし,2)ROM の推移に影響を与える因子を明らかにすることである.
【方法】 対象は2020 年10 月~2021 年5 月までに行われたTKA16 例17 膝.男性5 例5 膝,女性10 例11 膝,年齢は63 歳~87 歳で平均74.56 歳±6.01,経過観察期間は膝屈曲ROM がプラトーに達するまでとした. 以上の症例に対して術前の膝屈曲ROM とJOA,術後1 週ごとの膝屈曲ROM を測定した.計測は理学療法介入前とした.最終ROM に到達するまでの期間にかなりのばらつきがみられたため,膝屈曲ROM がプラトーに達するまでの期間で正規化し,膝屈曲ROM が最終可動域の80%,90%,100%に到達するまでの各因子の影響についても検討した. 術後の可動域に影響を与えると思わる因子として先行研究をふまえ年齢,術前膝屈曲ROM,術前FTA,術前後のFTA の差,術前後の膝蓋骨の厚さの差,術前後のJoint Line の高低差,術前JOA 点数,BMI を比較し検討した.
【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言に基づき対象者には研究内容を十分に説明し同意を得た.
【結果】 全ての対象において,TKA 術後の目標膝屈曲ROM である120°に達した.術前後のFTA の差(P 値0.047,相関係数0.50),Joint Line の高低差(P 値0.0194,相関係数-0.576)の項目で膝屈曲ROM との有意な相関を認めた. 【考察】 術中矯正角度が大きいものほど早期にプラトーに達した.同様の報告をしている先行研究では矯正角の強い群では内側広筋の侵襲に加え,筋切離部の離開面積が大きく疼痛を発生させる筋緊張が増加するため,3~4 週で停滞すると述べられている. 本研究では術前後Joint Line の高低差が少ないものほど早期に膝屈曲ROM がプラトーに達した.本研究においては全症例で術後のJoint Line の下降がみられた.その中で,早期にROM の改善が得られた群では術前後のJoint Line の高低差の変化が少なかった.これは骨切り量が少ないため侵襲が少なく,早期にROM の改善が認められたためと考える.