関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P5-1-4
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一般演題
大腿切断患者の非切断側に短下肢装具を使用し歩行の動揺性と速度改善が図れた大腿切断の一症例
*平野 颯人阿部 大樹真庭 弘樹
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抄録
【はじめに】 短下肢装具の効果として,片麻痺患者において立脚中期から立脚 後期に下腿及び身体を前方回転させることに対して恐怖心がある と背屈制動機構を付加することで恐怖心が軽減し,膝折れを防 止し身体の前方移動が可能になるとされている(Lehman et al, 1987).今回,大腿切断症例において非切断側の前方への重心 移動に恐怖心があり,歩行速度の低下や歩行の動揺性の増加を認 めた.そのため,非切断側に対して短下肢装具を使用し,良好な 結果が得られたためその有用性について検討した. 【症例紹介,評価】 症例は40歳代男性であり,X日に左骨髄炎,左下腿ガス壊疽と診 断.X +1日に左大腿切断を施行し,X +36日に歩行の獲得に向 けて当院へ転院となり,X +86日に仮義足を作成した.X +129 日に3軸加速度計(AYUMI EYE,早稲田エルダリーヘルス事業団 製)にて歩行計測をし,片側ロフストランド杖を用いた歩行速度が 0.39m/s,上下方向加速度が1.1g,Root Mean Square(以下, RMS)が8.9であった. 歩行観察では非切断側の立脚中期から立 脚終期にかけて膝関節屈曲位を認めた.患者からは前方重心移動 の恐怖心が聞かれた. 【倫理的配慮,説明と同意】 本症例はヘルシンキ宣言に基づいて実施し,対象者に十分趣旨を 説明し同意を得た. 【介入内容と結果】 非切断側に短下肢装具(以下,AFO)をX+129日から使用し,徐々 に膝関節伸展位で前方に体重を移動することが可能となったため, AFOを小型に変更しX+157日まで実施した.また歩行練習では3 軸加速度計を使用し,結果をフィードバックしながら練習を行っ た.その結果,X+157日の片ロフストランド杖歩行では歩行速度 は0.58m/s,上下方向加速度は0.4g,RMSは2.9となった.歩 行観察では,非切断側の立脚中期から終期にかけて膝関節屈曲角 度の減少を認めた. 【考察】 非切断側に対してAFOを使用し,非切断側の立脚中期から終期 での膝屈曲位が改善した.その結果,上下加速度が1.1から0.4, RMSが8.9から2.9と減少を認めた.また歩行速度が0.39m/sか ら0.58m/sと向上を認めた.これらの結果からAFO使用により立 脚中期から立脚終期の膝関節屈曲位を抑制した動作や筋収縮が学 習され,上下加速度やRMSが減少し,歩行の動揺性の低下と速 度の向上を図れたと考えられる.したがって,大腿切断患者の非 切断側に対する短下肢装具の使用は歩行の動揺性の改善や歩行 速度の向上に有用な可能性が示唆されたと考えられる.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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