抄録
【はじめに】 新人指導者は,指導者一人の負担が大きい・経験年数が浅い・ 経験的指導など多くの問題点を抱えており,新人指導者を支援 することが重要である.そこで,当クリニックで行ったGoogle classroomを利用した新人指導者支援の実際を紹介する. 【方法】 対象は,新人の指導を担当した経験年数3年目と9年目の理学療 法士2名とした.令和5年4月から令和6年3月までの12 ヶ月間, Google classroomを利用した新人指導者支援を実施した.指導 開始前にポートフォリオ・自己調整学習・経験学習などの教育学研 修を行い,開始時に指導者のキャリアプランのために1年後と5年 後の目標を記載する「ゴールシート」,3 ヶ月ごとに個人目標と指導 目標設定のための「目標シート」を作成した.1ヶ月ごとに目標のス トレッチ・進捗確認と相談・内省の促進・ポジティブ・フィードバッ クの4因子12項目からなる「経験学習チェック」をチェックし1ヶ月 間の指導の振り返りを行った.新人指導者の評価として4 ヶ月ごと に効果的な教育支援・精神的支援・専門職のモラル・モデル機能・ キャリア支援の5因子32項目からなる「理学療法士のメンタリング 行動尺度」を利用した. 【倫理的配慮】 対象者に口頭にて同意を得て,ヘルシンキ宣言に基づきプライバ シーの侵害がないように十分配慮した. 【結果】 経験年数3年目の指導者の理学療法士のメンタルリング行動尺度は (4 ヶ月目:79点,8 ヶ月目:68点,12 ヶ月目:76点)であった. 経験年数9年目の理学療法士のメンタルリング行動尺度は(4 ヶ月 目:73点,8 ヶ月目:68点,12 ヶ月目:76点)であった. 【考察】 両名共に,8 ヶ月目に理学療法士のメンタリング行動尺度の点 数が低下した.最初の4 ヶ月は新人教育指導するための時間が 十分に与えられた中での新人指導を行うが,4 ヶ月を過ぎてから は,新人も単位を算定するようになり,通常業務に加えての新人 指導となるため,指導者自身が十分に指導しきれなかったのでは ないかと考える.12 ヶ月目で向上したのは,通常業務の中で新 人指導との両立ができてきたからではないかと考える.Google classroomを利用することで,振り返りの習慣化や定期的な評価 による指導を客観視することができると考える.以上のことより, Google classroomは新人指導者の支援の一助になると考える.