抄録
【はじめに】
急性期病院の理学療法士は,脳卒中発症後早期から効率的な機
能回復を促す理学療法を実施すると同時に,自宅退院の可否や回
復期病院転院の適応など理学療法介入早期の段階で予測する必
要があるといわれている.
先行研究においては初回介入時のNational Institutes of Health
Stroke Scale(以下:NIHSS)で転帰を予測するという報告が散見
されているが,そのカットオフ値の点数にはばらつきがみられている.
そこで本研究では,当院の脳卒中患者を対象に自宅退院を予測す
る為の,リハビリ初回介入時NIHSS(以下:リハ初回NIHSS)のカッ
トオフ値を検討し円滑な退院支援の一助とすることを目的とした.
【方法】
対象は2020年9月~ 2020年10月まで当院に入院した脳卒中(く
も膜下出血を除く)患者でリハ初回NIHSSを評価できた79名.そ
のうち自宅退院した患者(以下:自宅退院群)35名とそれ以外
の患者(以下:対照群)44名の2群に分けて,患者背景を比較す
る.連続変数には対応のないt検定およびマンホイットニーのU検
定,カテゴリー変数にはFisherの正確確率検定検定を行う.また
Receiver Operatorating Characteristic curve (以下:ROC
曲線)を用いて感度および特異度から,転帰に対するリハ初回
NIHSSのカットオフ値を算出する.特に断りのない限り,検定時
の有意水準は両側5%とする.
【倫理的配慮】
当院の倫理審査委員会で承認を得た(承認番号:2024052118).
【結果】
対象者の年齢は76.34±10.54歳,男性54.5%(42名),入院期間は
20.34±13.8日,リハ初回NIHSSの得点は8.36±10.21点であった.
また自宅退院群と対照群を比較すると,年齢(75.0±11.5 vs 77.5
±9.6),性別(男性:54.3% vs 54.8%),入院からリハビリ開始
日までの日数(1.9±2.9 vs 1.9±1.1)には有意差がなく,リハ初回
NIHSS(1.71±2.8 vs 13.9±10.8),入院日数(10.6±6.5 vs 28.5
±13.0)で有意差を認めた.
ROC曲線解析の結果,自宅退院の可否に対するリハ初回NIHSS
のカットオフ値は3点でありAUC:0.935,感度:88.1%,特異度
88.6%であった.
【考察】
ROC曲線解析によって自宅退院の可否を予測するリハ初回NIHSS
のカットオフ値を算出した結果 は3点であった.先行研究と同様
に当院でもリハ初回NIHSSを用いて早期に自宅退院が可能か予測
でき,急性期病院として円滑な退院支援の一助になると示唆され
た.