公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
特集政策終了
自治体病院事業はどのようにして廃止されたか
柳 至
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 12 巻 p. 48-60

詳細
抄録

本稿の目的は,政治家が否定的であることが想定される自治体病院事業の廃止がどのようにして実現したのかを明らかにすることにある。近年では,自治体病院の経営悪化などを原因として自治体病院の廃止事例が増えている。しかし,政治家は自治体病院事業の廃止に否定的であり,自治体病院事業の廃止に際しては病院職員の処遇に対処する必要がある。つまり,自治体病院事業の廃止とは,政策廃止に関する先行研究で政策廃止の決定要因として強調されてきた政治的アクター間関係や政策の性質からは説明しがたい事例である。

本稿では,政策の存在理由という合理的要因が政策廃止に関わるアクターに与える影響に着日し,審議会というアクターがその政策知識を基に政策の存在理由がないことを示すことにより,廃止が実現したことを事例研究により示した。事例分析の対象とした福岡県は,全都道府県で初めて保有する全県立病院を行政直営ではなくした決定的事例である。本稿では事例研究を行い,当初は政治家が事業の廃止に否定的であり,廃止がしにくい性質を持っていたにもかかわらず,審議会というアクターがその政策知識を基に政策の存在理由がないことを示すことにより廃止が実現したことを明らかにした。

著者関連情報
© 2012 日本公共政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top