グローバル化や脱工業化など,マクロ状況の変化に伴うリスク構造の転換と福祉国家の持続可能性の危機は,公共サービスをめぐる公民関係の変化を引き起こした。この状況について,ガバナンス論は政策過程における民主的統制に,福祉ミックス論は福祉サービスの供給パターンにおける市民社会セクターの影響力,コプロダクション論は公共サービスヘの市民の関与に注目する。日本での公共サービスをめぐる公民関係の変化は,住民による公共サービス生産の拡充を図る方向で現れ,地域内に意思決定機関と事業実施組織を備える「(広義の)地域自治組織」を導入する自治体も出てきている。本稿は,宮崎市の地域自治区を事例とし,(広義の)地域自治組織がサービス生産システムとして機能しているかを検討した。地域自治区では,交付金が地域の活動量を増やしているが,自治会・町内会等の地域団体の影響により,活動の硬直性を示す傾向が見られる。一方,積極的に公共サービス生産に取り組む地域では,自律的なサービス生産に向けて,広く共有可能な課題の設定,対内的意思決定の場を機能させること,地域内動員パターンの組み替えが行われていることが明らかになった。本稿での分析は,日本における公共サービス供給の再構成において,行政媒介的な地域社会の変化に注目することが不可欠であることを示唆する。