2012 年 12 巻 p. 85-95
自治体は裁量を持ちながら生活保護政策を実施しているのか。さらに,自治体においては誰がどのように裁量を行使しているのか。これらの問いは,三位一体改革において国と地方の間で繰り広げられた生活保護論争の主たる争点であるにとどまらず,なぜ政策が実施される中で変容するのかという政策実施過程論の問題でもある。
本稿はトップダウン・アプローチ,ボトムアップ・アプローチ,ストリートレベルの官僚制という政策実施過程論の三つのアプローチを統合した分析枠組みを構築し,そこから導出した仮説を政令指定都市の保護率のパネルデータ分析によって検証する。その結果,自治体においてケースワーカーが標準作業要領(SOP)と専門性に依拠しながら裁量を行使していることを明らかにする。