2015 年 15 巻 p. 25-37
非営利組織や社会的企業の「市民性」を資金的に支えるために登場した市民コミュニティ財団。それらの公共空間での位置付けは,正統性を得ていない問題に対して市民の連帯や協同がベースになった取り組みに対してコミットメントできることにある。それらの事業に対して寄付という経営資源を提供する。また寄付を社会参加の重要なツールとして捉えると多様な社会参加の確立にもつながる。日本において,近年注目を集めている「市民コミュニティ財団」に着目し,それらが誕生した背景や経営実態と社会的機能と役割を明らかにした。加えて,市民コミュニティ財団が生み出すインパクトを考えるときに,直接的な寄付仲介やその金額,またそれにより生み出された活動成果が重要であるのはもちろんであるが,寄付仲介もしくはプロジェクト生成のプロセスで意識的にデザインされている非資金的支援に大きな価値と役割が内包されている点が重要である。社会課題の掘り起こしや深堀りといった取り組みを多様なステークホルダーと展開していることが地域のダイナミズムにつながっている。また緒についたばかりの日本のコミュニティ財団にとって今後,社会的な信用を獲得し,ソーシャルインパクトを創出し続けていくためにどのような条件と成長が必要なのかを明らかにした。