2015 年 15 巻 p. 38-50
本論文の目的は,クラウドファンディングの世界的な拡大を概観した上で,米英日の3か国の投資型クラウドファンディング規制を考察し,規制のあり方を検討することである。クラウドファンディングの拡大は,広範かつ多様な領域において,社会的インパクトを有するものと考えられる。特に,投資型クラウドファンディングは,投資の新しいあり方として注目される。ただし,クラウドファンディング全体の中で,投資型クラウドファンディンディングの割合は,必ずしも高いものではない。その要因の一つとして,法制度による規制が考えられる。投資型クラウドファンディングは,どの国の法制度においても金融・投資規制の対象となるが,投資規模が少額であるため,通常の規制が課されると,規制コストの負担は相対的に大きなものとなり,投資スキームが成立しなくなる可能性が生じる。したがって,投資型クラウドファンディングが拡大・成長するためには,開示規制の免除など,一定の規制緩和の必要性がある。しかし,過度な規制緩和は,投資者保護を疎かにし,市場の信頼性を低下させる危険性も含んでいる。そこで,市場育成のための規制緩和と,投資者保護のための規制整備ないし強化とのバランスが公共政策上重要な課題となる。本論文は,米国,英国および日本の投資型クラウドファンディング規制について比較検討した。その結果,日米英の政策当局は,上記の公共政策上の課題に関して,投資者保護を強化することを第一義的に重視した上で,市場の育成を企図しているものと考えられる。ただし,各国の規制は,導入後,検証に耐えうる時間が経過していないため,各国が導人した規制が適切に機能しているかどうかを判断するためには,今後の推移を慎重に見守る必要がある。