公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
論文
共管法の研究―環境法を業所管省が所管する法律上の趣旨―
永見 靖
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 16 巻 p. 73-84

詳細
抄録

本稿では,業界の振興を所管(業所管)する省が,環境法の多くを環境省と共管していることについて,法律上の趣旨は何か,その趣旨に沿った組織体制となっているかを分析した。環境法の中でも,リサイクル,化学物質等の分野では,業界振興が目的とされていないにもかかわらず,環境省以外の省が業所管の立場から環境省と共管している法律が多い。なぜ環境省専管とならないのか。本稿では,各省の設置法や個別の作用法に関する国会等での政府の説明を基に,業所管省が所管する法律上の趣旨を分析した。具体的には,中央省庁等改革基本法の省の編成方針やそれに関連する議論に基づき分析したが,その趣旨は見出せなかった。このため,個別の環境法の制定時の国会での議論等からその趣旨を明らかにした。この結果,環境法を業所管省が所管するのは,製造工程や製品の性状等の規制時に,対象となる業界についての技術的知見が必要だからだとされていることが確認された。最後に,この技術的知見の活用という趣旨を踏まえて各省内の事務分配がされているか,各省の組織令から確認した。組織令上は,規制対象となる業界が多い法律等において,業界について技術的知見を有していると考えられる課が,環境法を所管していない場合もあることが確認できた。

著者関連情報
© 2016 日本公共政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top