公共政策研究
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Print ISSN : 2186-5868
論文
公共政策としての文化芸術支援
申 斗燮
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2002 年 2 巻 p. 112-126

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抄録

本稿は,準公共財である文化芸術に対する政策の理論的,制度的分析を行い,これからの政策方向を示唆することを目的にしている。文化芸術を支える財政システムには,政府・民間をはじめ,非営利を含んだ3つの部門が混在していると言われている。実際に,最近非営利部門からの文化芸術に対する支援についての研究も盛んに行われている。本稿では,このような状況を踏まえた上で,政府の芸術文化に対する支援の正当性と文化芸術支援政策の形態,各国の文化政策を考察する。その結果,文化芸術の長期的また内実ある発展のためには,民間部門を含んだ社会各部門からの継続的また均一な支援と後援体系が定着しなければならないことが明らかとなる。また,本研究では,支援方法の1つである税制による間接支援政策を中心として理論的分析を行い,この結果,所得控除方式のもとで,政府が寄付控除率を引きLげることは,個人の寄付金支出を増加させることになり,また所得税率を引き上げた場合,個人の寄付金支出は,所得効果と代替効果の大小関係で符号が変わってくることがわかった。さらに,日本のように累進税制のもとで所得控除方式が採用されている場合,税額控除方式への移行が検討されることがあること,税額控除方式の場合,税率が寄付の価格に影評を与えないため,すべての所得階層で寄付の額は同じになること,また,寄付控除率を引き上げた場合も,個人は寄付金支出を増加させることが明らかになった。

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© 2002 日本公共政策学会
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