2021 年 21 巻 p. 64-79
グリーン・リカバリーを実行するため,各国政府は財政拡大で経済復興と脱炭素化の同時達成を目指している。本稿ではまず米国,EU,日本の財政政策を比較し,米国とEUが明確に「財政政策のグリーン化」志向なのに対し,日本は「グリーン化なき財政拡張」であることを確認する。後者の背景には,脱炭素化と経済成長を依然としてトレードオフ関係でとらえる視点がある。これは,産業部門の削減率をできる限り小さくし,費用負担を抑制する政策的特徴につながる。
短期的には産業救済を図るこの政策は,中長期的には日本の産業構造転換の停滞を生み出し,経済成長の低迷だけでなく,温室効果ガスの排出削減の停滞をもたらした。欧州を中心に多くの国々で「デカップリング(経済成長と温室効果ガス排出の伸びの切り離し)」が進展し,炭素生産性(GDP/温室効果ガス排出量)が上昇しているのと対照的である。本稿では,カーボンニュートラル宣言を受けて発表された「グリーン成長戦略」をはじめとする日本政府の温暖化対策もまた,こうした限界を免れていないことを確認する。
本稿は最後に,著者らが実施したマクロ計量エネルギーモデルを用いた2050年カーボンニュートラル実現のもたらす経済影響シミュレーションを紹介し,カーボンプライシング導入による税収を脱炭素化投資に還流することで,経済成長が加速されるとの結果を示した。日本の気候変動政策には,こうした政策イノベーションが求められる。