2022 年 22 巻 p. 156-166
件要約
本稿は,組織統合がODA評価に与えた影響を歴史的に検証する。2008年,政府開発援助(ODA)における実施を担う2つの組織,独立行政法人国際協力機構(JICA)と国際協力銀行(JBIC)が統合した。この再編を通じて,評価の実施プロセスはどのように変わったか。次の3点を整理し,その影響を析出する。すなわち,①統合に至るODAの歴史,②評価の変化に注目したJICA・JBIC統合の過程,③それがもたらす影響を順に把握する。このために,評価を実施する組織の変遷と評価のプログラムの変化に注目する。
その結論は,組織統合によっても評価を実施する個々のプロセスには変化がないというものである。ODAの実施をめぐって,さまざまな組織統合が繰り返され,それと同時に,それぞれの組織で培われてきた評価も一元化を進めてきた。2008年には, JICAとJBICは外形的に組織統合を果たし,両者の組織目的は一元化されたはずであった。しかし,評価のプログラムをみれば,たしかに歩み寄りを進めたものの,その運用は分かたれたままであった。結果としてそこには所管官庁の違い財務省と外務省の違いなども絡み,アカウンタビリティの断片化が生じていた。
アカウンタビリティの断片化は,政策のみならず評価の「遠心力」をもたらす。組織統合にあたっては,その制御のための「求心力Jが考慮すべき重要な論点となるだろう。