公共政策研究
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GHQ占領下の経済統醐磯構―経済調査庁の業務実績と評価―
丸谷 明摩
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2022 年 22 巻 p. 141-155

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抄録

太平洋戦争の敗戦に伴い,連合国軍の占領下に置かれた日本では閤経済が横行し,GHQは遅くとも1945年末までには占領統治に及ぼす影響を察知していた。日本政府は効果的対策の実現を追られ,1948年8月1日に創設したのが経済調査庁であり,占領終結後の1952年8月1日の廃止まで経済統制の円滑な実施に取り組んだ。

闇対策の先頭として期待された経済調査庁であったが,主管であったGHQのESS(経済科学局)と経済調査庁双方の一次資料によれば,GHQ側は経済調査庁に積極的な支持と肯定的な評価を下している一方,日本側の見方は厳しいもので,特に1949年の行政管理庁による監査では「実績・力量の不足」が強調されている。こうした評価の隔たりには効率よりも数値目標達成に重きを置くGHQと,遵法性や費用対効果といった業務効率をより重視する行政管理庁のスタンスの相違があったものとみられる。さらに経済調査庁の創設までは社会党,民主党という革新・中道政権,発足後は日本自由党,民主自由党という保守政権であったことが経済調査庁の存在自体に「政治性」を帯びさせ,その運営にまで影響が及んだことがGHQ資料などから裏付けられた。

今回,GHQと日本側双方の資料の検証作業により,経済調査庁をめぐる事実関係の一端を明らかにできたと考えるが,特に1951年後半から52年のGHQが経済調査庁をどのように認識していたかは資料が十分に探索できず,これらの残された課題の解明が今後の筆者の研究テーマである。

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