公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
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知識交換としての政策過程
松田 憲忠
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2022 年 22 巻 p. 8-19

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抄録

本論文のねらいは,知識交換の観点から政策過程を捉え直し,政策過程の理解の深化に向けた知識活用の視点の有用性を明らかにすることにある。具体的には,政策に関する知識を「理論知」「経験知」「現場知」の3つに分類したうえで,それらの知識のあいだでの交換をめぐるインタラクションを,知識交換の組合せごとに整理する。そこで明らかになったことは,政策過程に対して知識交換の視点からアプローチすることによって,政策過程を広い視野で描くことができるという点である。すなわち,多様なアクターが関わる多様な知識交換のインタラクションが政策過程において展開されているのである。こうした政策過程の描出から示唆されるのは,デモクラシーの実践の改善に向けて,社会全体で取り組むことの重要性である。さらに,本論文は,政策過程を知識交換として捉えることからみえてくる1つの課題―知識の融合―に論及する。政策過程における知識交換をめぐっては,知識活用の政治化といった実証的知見が蓄積されている一方で,政策過程に投入されるさまざまな知識を如何に融合すべきかという規範的な聞いについては,重要示唆を提供する理論やモデルは提唱されてはいるものの,政策選択の指針を提供するまでには至っていない。知識の融合に向けた哲学的な取組みがさらに進められることが求められる。

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© 2022 日本公共政策学会
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