公共政策研究
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政策実施過程における政策知識の創出―児童相談所の児童虐待対応を事例に―
鈴木 潔
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2022 年 22 巻 p. 20-32

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抄録

ヰヰ要約本稿では,児童相談所の児童虐待対応を事例として,政策実施を担う行政機関(実施機関)が政策知識を創出し,活用するプロセスを検討した。具体的には,政策知識を理論知と経験知に区別するとともに,SECIモデルを一部改変して,児童相談所の現場と厚生労働省,専門家・研究者,関係機関等で構成される政策ネットワークの相互作用によって,知識変換が促進されるメカニズムを検討した。その結果,把握できたことは次の5つである。

第1に,日々の実務を通じて現場職員に蓄積された経験知が原点となり,職場内および関係機関との知識の「共同化」が図られていること,第2に,現場職員の持つ経験知が,ボトムアップでルール化・モデル化されて理論知となり,対外的に「表出化Jされること,第3に,現場職員が依拠する理論知と,他の専門分野の理論知が「連結化」することで,政策実施の改善や新たな政策体系の創出につながる乙と,第4に,国がトップダウンで作成した法制度や指針などの理論知が現場職員に「内面化」されること,第5に,実施機関と政策ネットワークの相互作用により,知識転換が促進されることである

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© 2022 日本公共政策学会
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