ヰ体要約
本稿の目的は,行政機関内のEBPMの内生化に資するべく,行政システムとEBPMとの接合に係る内実を前提として,両者の接合性を探索することにある。そのため,本稿では,地方自治体を例に,当該接合の優劣を左右する同システム内のアクターたる行政職員の行動規範に着目しながら接合に係る行動様式を推論し,その改善可能性について検討を加えた。当該推論を基に得られた同探索の結果は次のとおりである。第1に,行政システム内での科学的知見の活用は各アクターが活用価値をどの程度認識するかに依存することである。同システムで展開される政治的な駆け引きに鑑みると,総じて科学的知見の活用に対する各アクターの姿勢は前向きとはいえない。第2に,その中でも内的要因が整えば,すなわち科学的知見の獲得コストが組織的に許容され,かつ,一部アクターがその肯定的な活用方法をあらかじめ予測できれば,同知見のアクターへの接合性は高まることである。第3に,外部による直接的な要請・介入の影響力が強くとも,それらと対峠する異見が社会的に受容されれば,かつアクターが科学的知見の活用を糧に当該影響力の低減を目論むならば,当該接合性は高まることである。