公共政策研究
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EBPMへの道・再考―その客観的証拠をめぐる組織的諸問題の検討―
深谷 健
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2022 年 22 巻 p. 72-85

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抄録

本稿は,EBPM推進の期待に反して,その機能が阻害される要因について,行政組織における「情報の作成」と「情報の利用」に着目して検討するものである。とくに,かつてPPBSと政策評価の設計で議論された2つの主たる課題:政策効果検証と情報利用の政治性に焦点を当てる。まず,組織における情報作成の課題として,政策効果検証をめぐる証拠の客観性追求の意義とあわせて,その作成に行政内部で過大なコストがかかるがゆえにその作業が不安定になり,分析対象も限定化されることを示す。次に,組織の情報利用の側面では,客観的証拠を追求すれども,組織上位段階と組織外部での利用段階で,情報が政治性を帯びざるを得ないその構造的な政治的メカニズムを指摘する。そして,こうした情報作成と情報利用をめぐるそれぞれのトレード・オフ構造を組み合わせ,「EBPMの組」織的ディレンマ」として把握できるEBPM推進を制約する構造を示す。すなわち,組織において証拠の客観性を追求すればするほど,一方で情報作成商では過大な行政内部コストが生じ、他方で情報利用面では政治化フィルターを通らざるを得ないという構造的制約があること,そしてその結果として,期待されるEBPMを容易に形骸化させるリスクを持つことを示唆する。であるからこそ,あらためて,「EBPMへの道」を模索する上では,既存の政策過程を考慮することが重要になることを示唆する。

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© 2022 日本公共政策学会
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