内閣の調整機能強化のために導入された経済財政諮問会議は,小泉内閣において事実上ここで決定するという姿勢を首相が示したことによって,極めて大きな役割を持つに至った。そして,民間議員がアジェンダ設定の上で大きな役割を果たした。民間議員の役割は,専門家というよりは体制内アドボカシーであった。このような経済財政諮問会議の活動の実質的な役割は閣議の実質化であったといえる。民間議員という外部からの刺激剤を利用することによって,主要経済閣僚間での実質的議論が可能になった。このような経済財政諮問会議の役割は,国際的にもユニークであった。閣議を実質的に活性化したという機能面ではイギリスのPSX関係閣僚会議と似ている。しかし,大臣によって構成されるPSX関係閣僚会議とは,外部の民間議員の力を借りているという面で異なる。他方,外部者を動員するという意味では,米国のCEAと似ているが,CEAが経済学の専門家によるチェック機能を担うのに対して,経済財政諮問会議の機能は,科学的検証とともに国民の視線の代弁というアドボカシー機能を含んでいた。経済財政諮問会議は,政策形成過程における様々な緊張関係・対立を透明化し,明示化しているという意味では,民主主義の観点からも意味があるといえる。しかし,これが今後安定化していくためには,与党内調整メカニズムとの調整,財務省を中心とする年次予算編成過程との関係の整理,関与の基盤となる知識情報基盤の整備といった課題を抱えている。