2003 年 3 巻 p. 46-54
政治の世界の情報公開は,行政の情報公開との違いや,政治改革の中で論じられてきた情報公開の意味などを示すことが特徴となる。
第1に,政治を政策決定から捉えると,政策判断の根拠になる資料・データなどの情報が公開されていることがまず必要になる。
その点では,政治資金規正法に基づく届出の怪しい数字・データを基に議論をすることに,政治の世界ではある意味で慣れきた。
第2の問題は,政策決定「過程」の情報公開である。そこには,その過程を「完全生中継」せよという立場から必要に応じてという立場までの幅がある。
この点では,国会や審議会などは開示が進んでいるものの,実質的な意思決定を行っている政党内部の過程や,「意思決定途中」の官僚機構内部の情報公開は,依然として,非公開が原則である。
第3は,情報公開を誰に対してするのかである。国民一般なのか,専門家なのか,あるいは,「関心をもった」公衆なのか。接近可能性(accessibility)の確保はある意味で,請求権に基づく請求に対して情報を開示する「狭義の情報公開」であるが,情報提供を含む「広義の情報公開」の主張もある。
地方自治体の首長たちの運動は,情報提供,情報共有にまで進め,県民・市民と情報を共有すると同時に,県民・市民に責任を持ってもらうという発想が背後にある。
第4は,政治改革の文脈での情報公開である。政治改革における情報公開は,第1位の優先問題ではなかったが,「説明責任」は直接的な手段というよりも,ボディーブローのように長期に効いてくる,有力な武器の1つとして考えられてきた。
政治の領域での情報公開も,最終的にはコーポレート・ガバナンス問題に行き着き,それは,金融や医療のような政策領域とも共通しているのである。