2006 年 6 巻 p. 90-101
本稿は,地方分権時代の自治体における政策調整に関して,その構造的な課題を分析しようとするものである。
地方分権改革により,中央省庁の通逹や補助金による縦割りの縛りが弱まるとされ,自治体内で自律的な政策調整がなされることへの期待が高まっている。しかし,制度的な仕切りが長く続いてきた結果,「この問題は,あの分野の課題,だから,あの部局の担当」という思考回路は,自治体職員の中で内在化しているのてはないだろうか。
そこで,行政活動を構成する要素を整理し,新たな課題に積極的に対応するための条件や,逆に活動の重複や空隙が生じて調賂が座礁に乗り上げる原因を検討することとしたい。まず,行政活動について,組織・人事・政策の観点から分析枠組を提示する.次に,分析枠組に照らして,政策調整の基盤が賂わない事例として自治体における動物愛護管理行政を選び,組織の分断性,人事の不適合性,政策の流動件を確認し,政策調整に向けた構造的な課題を検討する。最後に,こうした構造的な課題を克服するための契機として,「政策分野別基本計画」の策定の意義を確認したい。