特定の課題の推進のためにNGOや国際機関や国家の連携により形成されるトランスナショナル唱導ネットワーク(TAN)は,ブーメラン効果を発揮して,対象国に圧力をかけることに成功することがある。しかし対象国が,あたかも規範を内面化しているふりをしながら実際には規範の合意を否定する行動(as if的行動)をとる場合,ブーメラン効果をもたらすのは難しい。本稿ではOSCE(欧州安全保障協力機構)における人権NGOの役割と活動を事例に,冷戦後の現在,OSCEで人権NGOの機能が変化しTANの活動の制限が検討されている状況を明らかにする。その説明として,as if的行動がブーメラン効果の発揮よりも,時間にともなう効果逓減が少ないという発展的な説明を試みる。