2008 年 7 巻 p. 73-82
冷戦後の日本の外交安全保障政策は,「当事者意識に欠け,適切な問題認識・整理の枠組みを持たず,時間感覚の抜け落ちた」背景によって,そのアジェンダ・セッティングに重大な誤謬を犯している。それは,越境問題や非伝統的安全保障への取組みによって,冷戦後の新しい国際環境に対応しているかのような錯覚のもと,自らの置かれた地政学的困難さの認識と,日米関係の再構築という本質的問題を見失っていることである。国際関係における越境間題の正確な理解に加え,日米同盟の不変性への過剰な期待から脱し,正当な危機感を持った政策形成のためには,外交安全保障政策に関わる政策コミュニティの活性化こそが鍵であろう。