2010 年 9 巻 p. 67-80
本稿は,官庁・利益集団・政権党の戦略的相互作用に注目しながら,1970年に行われた著作権法全面改正に至る政治過程の事例分析を行うものである。どのような条件のもとで,利益集団は官庁の政策形成に影響を及ぼし,自らが望む政策帰結を実現することができるのか。上記の間いに対して,本稿はゲーム理論に依拠して以下のような説明を与える。すなわち,利益集団が自己の選好に近い政策帰結を実現できるかどうかは,利益集団が政権党を動かして自己に不利益な政策を修正できることを官庁に認識させているかどうかということに左右される。分析を通じて,政治学が従来あまり関心を寄せてこなかった政治家が日常的に関心をもたない政策分野においても,利益集団による官庁への火災報知器型監視を通じて政治家の意向が反映されることと,しかしその状況下でも利益集団と政治家にコストがかかることを利用して,官庁が戦略的に自己の選好に沿う政策を実現しうることが明らかになる。